2026年2月記載
食物アレルギーの大事なおはなし

食物アレルギーについての知見はここ数年で大きく変わってきています。ここでは、食物アレルギーについて現在言われている大事なことを書かせていただきます。
重要なことは、
- 必要最小限の食物除去にとどめ、離乳食は遅らせることなく通常のプラン通りに進めていく
- 湿疹があればきちんと治療をして皮膚の良い状態を保つ。
です。
以前は離乳食として開始することを遅らせることでその食物のアレルギーを予防するという考えがありました。しかし、今はむしろ、食べることを遅らせることは、かえってその食物のアレルギーを作りやすくすると言われています。
離乳食の通常のプランどおりに少量から食べていくのがよいということです。
その理由としては、口から食べたものはきちんと「食物」として認識されるようになりアレルギーの原因とはなりにくくなるというしくみがあるからです(経口免疫寛容といいます)。
一方、日常の中では食物のカスが落ちていたりして皮膚に付着することがよくあります。食物のカスが付着しても、健康な皮膚であれば外からの異物の侵入を防ぐことができるので問題となることはありません。
しかし、湿疹などで荒れた皮膚の場合は食物のカスなどの異物の侵入を防ぐしくみが低下しているので付着した食物のカスは体内に侵入することがあります。
皮膚から侵入してきた食物のカスは、体に入ってきた経路が食べた場合とは異なるために免疫の攻撃を受ける対象と認識されてしまい食物アレルギーの原因となることがあります。これがアレルギーができあがる仕組みだと最近は言われています。
離乳食での食物の開始を遅らせて食物としての認識がされないままでいると荒れた皮膚から食物が侵入する方が先に起こり、その結果、食物アレルギーになることがあるということです。例えるなら、同じ人であっても最初に鍵の壊れた窓から侵入してきた人は不審者となり、そのあとに玄関からピンポンをならして訪れたとしてもやはり不審者のままで警察への通報の対象となることと同じです。
湿疹で荒れた皮膚をそのままにしていると食物アレルギーになりやすいということも気を付けていただきたい重要なことです。
「必要最小限の食物除去にとどめ、離乳食は遅らせることなく通常のプラン通りに進めていく」
「湿疹があればきちんと治療をして皮膚の良い状態を保つ」
というのが食物アレルギーで大事なことです。
また、妊娠中や授乳中の母親の食物除去も今は意味がないといわれています。
2026年2月記載
離乳食を食べさせていくときに
注意してもらいたいこと
離乳食は通常のプラン通りに進めていき、それぞれの食物ごとに少量から食べさせていきます。初めて食べるときは、気になることがあれば医療機関を受診できる時間帯で食べさせるのが良いと思います。
0歳で食物アレルギーの原因になることが多いものは、鶏卵の卵白が最も多く、次いで牛乳、小麦です。アレルギーによる症状は食べたあと30分~1時間以内に起こることが多いです。
アレルギーでみられる症状は表にあるように軽症(グレード1)、中等症(グレード2)、重症(グレード3)に分けられます。
最初は軽症の症状であっても中等症、重症というように症状が進んでくることがありますので1時間くらいは症状が進んでこないかを注意して観察することが大切です。
即時型症状の臨床所見と重症度分類
アレルギーではないかと気にされることが多い症状としては、口の周囲が少し赤い、少しかゆそう、体や手足の一部が少し赤い、1回嘔吐があったなどの軽症にあたる症状です。
軽症の症状のみにとどまり30分~1時間くらいで落ち着く場合はアレルギーを心配する必要はなく、たまたまその時に起こっただけで次に食べたときには何ともなかったということが多いです。軽症の症状がみられたときに大事なことは5分間隔くらいで観察を続けて症状がひどくなっていかないかどうかをみることです。
多くの場合はひどくはならず30分~1時間くらいで症状は消失します。症状がひどくならずに短時間で消失する場合はアレルギーの可能性は低く問題としなくて良いことが多いです。しかし、同じ食物で軽症の症状が繰り返す場合は受診をしてください。
念のためにその時の症状と時間の経過を記録しておき、可能であれば写真や動画を撮っておかれると、後日に受診された際に参考になるのでありがたいです。
軽症にとどまらずに皮膚の赤い部分が広がっていく、かゆみが強くなってくる、嘔吐が何回もある、何回もゆるい便がでる、おなかの痛みが強くなってくる、咳がひどくなってくるといったグレード2(中等症)の症状に近づく場合はアレルギー症状である可能性があるので、すぐに医療機関を受診して下さい。
2026年2月記載
食物アレルギーかどうかの
診断について

食物アレルギーかどうかの診断は、疑わしい食べ物を食べたときにどんな症状が食後どれくらいの時間でみられてどうなったかということが最も重要となります。
必要があれば血液検査などでその食べ物に対する特異的IgEの値を調べますが、これは症状とセットで判断するもので血液検査だけで明確に判断できるものではありません。
特異的IgEの検査は絶対的な尺度にはならず、食物の種類によってもその診断への確からしさには差があります。食物の種類によっては参考程度の検査となるものもあったりします。
食物アレルギーの最も確実な検査は、実際に食べて症状がみられるかどうかをみる食物経口負荷試験というものになります。
しかし、この検査は時間や手間がかかり大変で検査を行っている医療機関は限られています。
疑わしい食物を食べてどうなったかという情報が最も重要なのですが、なかには症状の有無にかかわらず血液検査で食物のアレルギーがあるかどうか一通り見てほしいという方がおられます。
これは間違いで食べたときに症状があったということとセットでないと判断できません。
血液検査だけで明確に判断できるのなら医療者側もすごく楽なのですが、実際はそうはいきません。食べたときの症状の経過、血液検査の数値、年齢ごとの食物アレルギーの特徴などを考慮して総合的に判断する必要があります。
症状の有無に関係なく多くの食物について検査をする医療機関も中にはありますが、これは厳密にいうとよろしくありません。症状の裏付けなく検査の値が高かったというだけで判断すると本当にアレルギーかどうかの確実性は低いです。
結果、不安を掻き立ててしまい念のための食物の除去をたくさん作って食生活を貧しいものとしてしまうことになりかねません。
検査をして値が高ければ「念のため除去してください」と言うのは簡単ですが、言われて除去する側はかなりの食生活の制限をその後に課されることになります。「不必要な除去はせず、本当に必要な最小限の食物の除去が大事」です。
ここでは、小児の食物アレルギーの現状を見てみたいと思います。「令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書 令和6年9月 消費者庁」の内容をもとに以下に書かせていただきます。
この調査はアレルギーを専門とする医師(日本アレルギー学会指導医及び専門医並びに日本小児アレルギー学会会員)の中で協力が得られた医師のべ772名からの報告で行われました。令和5年1月から3ヵ月ごとに4期に分けて報告が行われ、「食物を摂取後60分以内に何らかの反応を認め、医療機関を受診した患者」が集計されました。
集計の結果、原因となる食物がわかるアレルギーの事例は6033例ありました。
年齢分布は0歳が1418例と最も多く全体の23.5%を占めていました。1歳が全体の12.8%、2歳が9.5%でした。
0歳~2歳が全体の45.8%を占め、0歳~6歳まででは全体の74.4%となり就学前の小児の率が高いことがわかります(図1)。
原因食物については全年齢でまとめてみると品目別では鶏卵 26.7%、クルミ 15.2%、牛乳 13.4%、小麦 8.1%、落花生 7.0%となっていました(図2)。
さらに年齢別に食物アレルギーが初めて見られた例(初発例)の原因食物をみてみます(表3)。初発例は全体で3981例ありました。
原因食物は0歳では鶏卵が最も多く、牛乳、小麦と続きました。1歳と2歳を合わせたグループでは鶏卵、クルミ、イクラ、落花生、カシューナッツの順で、3歳~6歳のグループではクルミ、イクラ、落花生、カシューナッツの順と年齢により違いがありました。
クルミ、カシューナッツといった木の実類が過去の報告と比べて上位にあがってきていることが注目されます。
このことは日々の食生活の中で木の実類を食べる機会が増えてきたことと関係しているようです。
この年齢別の初発例のデータは、子どもの年齢によりどんな食物に注意したら良いかを知る手掛かりになると思います。なんでもかんでも心配で気を張り詰めていたら大変ですから参考にしていただければと思います。
(図2)即時型食物アレルギーの原因食物
注釈:原因食物の頻度(%)は、小数第2位を四捨五入したものであるため、その和は小計と差異を生じる。
(表3)年齢群別原因食物(初発例)
注釈:各年齢群で5%以上の頻度の原因食物を示した。
また、小計は各年齢群で表記されている原因食物の頻度の集計である。
原因食物の頻度(%)は小数第2位を四捨五入したものであるため、その和は小計と差異を生じる。
年齢が進むと食物アレルギーがどうなるかについては、卵、牛乳、小麦といった乳児期の食物アレルギーは幼児期には治ってくるものが多いです。一方、7歳以降ででてきた甲殻類や果物などの食物アレルギーは治りにくい傾向があります。
アレルギー症状についてみてみると、多いのは皮膚症状(皮膚の発赤、蕁麻疹、かゆみなど)で全報告例の81.2%を占めていました(図4)。
アレルギー症状で最も大変なショック症状がみられたものは586例あり、食物アレルギーの全報告例6033例の9.7%でした。
ショック症状を来した原因となった食物は数の上では、多い方から鶏卵、牛乳、クルミ、小麦といった順でした(図5)。
一方、アレルギー症状を呈した例(即時型症例数)に対するショック症例数の率が高いものは、マカダミアナッツ 18.8%、小麦 15.7%、ピスタチオ 14.0%、カシューナッツ 13.3%、木の実類(分類不明) 13.2%、牛乳 11.8%、クルミ 9.4%、...と上位10品目中5品目が木の実類でした(表6)。
これより木の実類はショック症状が起こる率が高く注意すべきことがわかります。
以上、小児の食物アレルギーの現状についてのデータを書かせていただきました。参考にしていただけるとありがたいです。
※図や表は元文献からコピーペーストしてきたもののため番号が不自然ですがご容赦ください。
2026年2月記載
食品の食物アレルギーに
関する表示について
食品の食物アレルギーに関する表示については、表示が義務付けられているものとして特定原材料8品目、表示が推奨されているものとして特定原材料に準ずるもの20品目があります(以下の表)。
特定原材料は重症度が高い、または症例数が多いものが選ばれています。特定原材料に準ずるものは過去に一定の頻度で健康危害がみられたものが選ばれています。
表示の対象となるものは容器包装された加工食品および添加物であり、中食(ばら売りや量り売りなど容器包装されずに販売されるもの)や外食(出前を含む)でのものは表示の対象とはされていないので注意が必要です。
またクルミやカシューナッツなどの木の実類は粉状にされて使用されていることもあり見た目では判断できないことが多く、そのアレルギー症状の強さもあり注意が必要かと思われます。
また食物アレルギーに関する表示については消費者庁の検討により修正が適宜行われています。
令和5年にはクルミが特定原材料に準ずるものから特定原材料に格上げされ、令和6年にはマカダミアナッツが特定原材料に準ずるものに加わりました。
今後、カシューナッツを症例数の増加等を踏まえて特定原材料に格上げすることが検討されています(2025年6月時点)。
以上、食品の食物アレルギーに関する表示について書かせていただきました。食品を購入する際に参考にして頂ければと思います。